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ゴーストレストランを開業するには?メリットや開業するまでの流れを解説

  • 公開日:2023年4月28日

長引く新型コロナウイルスの影響で、外食離れが一段と進み、飲食店は大きな打撃を受けています。一方、外食に代わって“中食”が増えたことで、フードデリバリー市場は大きく成長してきました。そうした中で、デリバリーに特化した「ゴーストレストラン」と呼ばれる業態が増え続けています。では、今注目されているゴーストレストランの魅力とはどういった点なのでしょうか。
そこで今回は、ゴーストレストランの開業を検討しているかたに向けて、ゴーストレストラン開業までの流れやメリット・デメリットなどを詳しく解説いたします。

ゴーストレストランとは

ゴーストレストランとは、客席を持たずデリバリーのみでお客さまに料理を提供するレストランのことです。

ニューヨークから始まったと言われるゴーストレストランは、フードデリバリー市場の拡大を背景に日本でも増えてきました。デリバリープラットフォーム運営会社がお客さまに料理を配達するため、ゴーストレストランではお客さまが来店することはありません。来店されるお客さまの対応がない分、飲食店側のコストや労力は大きく削減されます。

また、実店舗を営業しながらサイドビジネス的に他業態の店舗を営業するフードデリバリー店舗を「バーチャルレストラン」と言いますが、日本ではゴーストレストランとほぼ同じ意味で扱われる場合も多いです。

ゴーストレストランは飲食店の開業を検討しているかたにとって、開業のハードルを大きく下げる画期的なシステムとして注目されています。

ゴーストレストランのメリット

一般的な飲食店開業と比べて、ゴーストレストランの開業には多くのメリットがあります。いくつか解説していきましょう。

初期投資を抑えられる

ゴーストレストランは客席を用意する一般的な飲食店と比べると初期投資が少なくて済みます。一般的な飲食店の場合、店舗の外装や内装、インテリアなど、おおよそ1,000万円程度の初期投資が必要です。
資金を用意できたとしても投資した分を回収するまでに時間がかかり、不安に感じることもあるでしょう。また、ホールスタッフの採用やOJTにも時間とコストがかかります。
ゴーストレストランではこのような初期投資の負担が大きく軽減されます。また、実店舗をお持ちのかたや料理教室などを運営していたかたなど、既存の調理機具や厨房設備を持っているかたはそれを活用することで、さらにローコストで新業態の店舗を開業することもできます。ゴーストレストランでは大きな初期投資をすることなく新店舗を開業できるのです。

天候などの外的要因を受けにくい

一般的な飲食店では、新型コロナウイルスやインフルエンザの流行、天候など、外的要因により来店客数が減少する場合があります。ゴーストレストランの場合は天候に大きく左右されずに注文が入ります。外出が面倒に感じるような天候の日は逆に注文も多くなる傾向もあります。

コンセプトが自由自在

一般的な飲食店の場合、開業時に決めたコンセプトで内外装やメニューを決めています。
開業後、売上が思うように伸びず、コンセプトを変えて再チャレンジしようとした場合、内外装などの工事などでさらに資金が必要になります。しかし、ゴーストレストランの場合、開業後、売上が伸び悩んでコンセプトを変更したい場合に変更するのはWEB上のメニューや文言だけですので、資金はかかりません。
異なるジャンルの料理へのチャレンジや、同じ厨房での多店舗レストランの展開もゴーストレストランでは自由自在です。
さらに、実店舗を持っているかたは、既存の業態と異なる業態で新店舗を開業できます。例えば、「蕎麦屋」が、そば粉をアレンジしてメニュー開発をすれば、「ガレット(そば粉のクレープのような軽食)の店」として開業できるのです。そうなれば、既存店舗の売上プラスゴーストレストランの売上になり、安定した経営に繋がるでしょう。

ゴーストレストランのデメリット

一般的な飲食店開業と比べた場合、ゴーストレストランの開業にはデメリットもあります。いくつか解説していきましょう。

ターゲットがせまい

一般的な飲食店では、近隣住民から旅行者まで幅広くターゲットにできますが、ゴーストレストランではフードデリバリーを利用する人だけがターゲットとなります。
利用するデリバリープラットフォームの登録者数やスマホ世代の食の好みなどが大きく影響するでしょう。登録者もデリバリープラットフォームごとに年齢や平均利用金額などの違いがありますので、それぞれに見合った戦略が必要です。

お客さまとの信頼関係構築が難しい

一般的な飲食店ではお客さまとの信頼関係構築がリピーター獲得に繋がります。そのため、店舗ではお客さまと会話をしたり、お客さまが居心地の良い雰囲気の店づくりをしたりして信頼関係構築に力を入れています。
しかしゴーストレストランではお客さまが来店しないため、そうした信頼関係構築が難しい面があります。そのため、味やコスパ、プロモーションだけに頼りがちになり、売上が伸び悩むというリスクがあります。
また、群雄割拠のフードデリバリーでは同業態の他店も多く、専門的な知識がないままでの開業はリピーターが増えて売上が安定するまでに時間がかかる可能性もあります。

デリバリーならではのコストも

一般的な飲食店とは違い、ゴーストレストランではデリバリープラットフォームに登録しなければ運営が難しいため、デリバリープラットフォーム運営会社と契約して、売上の35~43%程度の手数料を支払わなければなりません。また、新たにフードデリバリー用に使い捨て容器や箸などの準備も必要になります。
これらの経費は売上や注文数に対して増減する変動費のため、安定した経営のためには正確な損益分岐点を算出する必要があります。
あらゆる状況を想定し万全な準備をして開業しなければ、すぐに経営難に陥る可能性があります。専門的な知識がない場合は飲食店に特化した経営コンサル等に依頼するのも1つの手段です。

ゼロからゴーストレストランを開業するには

ゴーストレストランを開業するには、主に「個人で開業」「法人化して開業」「FC開業」の3パターンがあります。

個人で開業

ゼロから開業する場合、まずは個人事業主として個人での開業が望ましいでしょう。個人での開業では自由度が高いため、自分のアイデアを活かした店を持ちたいかたなどには特におすすめです。軌道に乗って売り上げが大きくなるまでは、税金も少なくて済みます。

法人化して開業

最初から一定の売上が見込めるのであれば、節税対策として法人化しての開業をおすすめします。法人は社会的信用度も高くなり業者との取引も容易になります。しかし、法人税や社会保険料などの支払い義務が発生するため、売上によっては考えていた以上にデメリットのほうが大きくなる場合もあることから、個人で開業するのか、法人で開業するのかをしっかり見極めなくてはいけません。

FC(フランチャイズ)開業する

ゴーストレストランをFC展開している大手企業のブランドに加盟申請することでFC開業することができます。ブランドのネームバリューで最初から一定の売上が見込め、またFC本部からレシピや宣伝手法などのマニュアルや個別サポートが受けられるため、かなりスムーズに開業できます。FC本部にロイヤリティとして売上の何割かを支払う必要がありますが、まずは安心安全に開業したいかたにおすすめです。

ゴーストレストラン開業までの流れ

ここでは個人でゴーストレストランを開業する場合の流れを解説します。

1. コンセプトを考える

自分がやりたい業態とゴーストレストランで売れる業態が必ずしも一致するとは限りません。生計を立てるために開業するのであれば、失敗のリスクが低い手法でゴーストレストランを開業しましょう。そのために最初のコンセプト作りが大切です。自分がやりたいことから派生させるのではなく、売れるコンセプトに自分がやりたいことを追加するイメージがおすすめです。

2. 食品衛生責任者資格や飲食店営業許可書を取得する

ゴーストレストランの運営に必要な資格などはあらかじめ取得しておきましょう。食品衛生責任者は各都道府県の食品衛生協会が開催している講習を受講することで取得できます。飲食店営業許可書は地域によって要件が異なりますので最寄りの保健所に確認しましょう。

3. 調理施設の確保

ゴーストレストランは、テナントやシェアキッチン、自宅など、保健所の要件を満たした施設なら開業できます。どのタイプの調理施設を利用するかはコンセプトや事業形態にもよります。
最近ではゴーストレストラン専用のシェアキッチンを提供する会社もあります。

4. 補助金や助成金の確認

地域により異なりますが、飲食店開業にあたり自治体などから補助金や助成金が受けられる場合があります。可能な限り活用しましょう。

5. デリバリープラットフォーム会社に相談

ゴーストレストランはデリバリープラットフォームなくして運営することは難しいです。手数料や強みなどはデリバリープラットフォーム運営会社によって様々です。それぞれお話を伺ったうえで、複数社との契約をおすすめします。
契約終了時に違約金や端末代金の支払いが必要な会社もありますので、契約書をしっかり確認することが大切です。

6. マーケティング

店舗のホームページやSNSを開設しましょう。お客さまはインスタグラムなどのSNSを通じて飲食店を知ることも多く、大きな宣伝効果が期待できます。ゴーストレストランのマーケティングの場合、店舗がないため、料理の写真や動画の印象が注文数に影響することが多いです。
ターゲットや同エリアのライバル店なども念入りに調査することをおすすめします。事業成功に向けて、SNSやホームページには力を入れましょう。

キッチン(テナント)選びのコツ

ゴーストレストランでのキッチン(テナント)選びもいくつかご紹介いたします。

クラウドキッチンやシェアキッチンを利用する場合

クラウドキッチンとは、客席やイートインスペースを設けず、フードデリバリーやテイクアウトをメインに、食事を提供する飲食店が複数入居している施設です。月額制賃貸契約がほとんどで、ゴーストレストラン用の物件ではすでに設備も完備されています。初期費用が軽減されすぐに安価で開業できます。
また、シェアキッチンとは、複数の飲食店事業者が共同でキッチンを利用することで、ランチとディナーで使い分ける時間帯シェアや曜日別シェアなどがあります。
基本的には既存飲食店のテナント所有者に賃料を払って借りること(間借り)が多く、時間単価や月額で計算することが多いです。ただし、既存の飲食店がキッチンを使わない時間帯しか営業できません。

テナントを借りて開業する場合

一般的な飲食店と違い、立地や人通り、入り口の見栄えなどで、お客さまの来店を想定しなくてよいことがメリットです。その代わり、近隣の住民の人数や学生の割合、一人世帯の割合など、その地域においてデリバリーサービスを利用するお客さまがどれぐらいいるのかを、考える必要があります。また、賃料の安い小規模テナントが理想ですが、常用調理設備の他、ストック用の冷蔵庫・冷凍庫、包材などの保管スペースなども必要なため、後からスペースが足りなくならないよう注意が必要です。また、電気の容量や都市ガスかプロパンガスかなど、開業後の運営をシミュレーションして物件を探しましょう。

クラウドキッチンやシェアキッチンを利用するか、自分でテナントを借りるかによって初期費用は大きく異なります。ただし、開業後の固定費や自由度なども大きく変化するため、キッチン選びには、商品リストや1日の販売数などを想定し、それに対応しうるための綿密なシミュレーションが必要です。

ゴーストレストランを運営するポイント

ゴーストレストランを運営するにあたって注意すべきポイントは何でしょう。いくつか解説します。

ターゲットを明確に

ゴーストレストランをデリバリープラットフォームに登録して参入する場合、エリア内の年齢層や地域のライバル店などを調査し、ターゲットを明確にしたほうが効果的でしょう。
例えば、学生が多いエリアなら学生が好むようなメニューや価格帯に設定するなど、マーケティングに基づいた検討が必要です。オフィス街に近い場合、夕方以降にどのぐらいのデリバリー需要があるのかなども調査する必要があります。デリバリープラットフォームの配達エリアを分析し、ターゲットを明確にしたうえで適切なメニューや価格帯を検討しましょう。

デリバリーに特化したメニューを

自分が売りたいメニューはデリバリーに向いているでしょうか。例えば、調理に30分もかかるメニューや注文が入りにくいメニューもあります。フードデリバリーに向いているメニューを客観的に分析し、デリバリープラットフォームには売れるメニューと売りたいメニューをバランスよく配置しましょう。

また、せっかくメニューをたくさん用意しても、稼働率の低いメニューによっては食材の在庫だけが増え、不良在庫になる可能性も忘れてはいけません。フードデリバリーに向いているメニューを単品に絞って開業することも検討が必要です。

お客さまの立場に立って

一般的な飲食店は、注文前に料理の補足説明などでお客さまとやり取りができますが、ゴーストレストランを含めたフードデリバリーではやり取りができません。
そのため、WEB上の料理の画像や文言などを頼りにお客さまは注文されます。お客さまの立場に立ってわかりやすいメニュー表示を心掛けましょう。実際に届いたものが料理の画像よりも著しく劣ることは、優良誤認表示として禁止されているだけでなく、口コミで評判が悪くなり、ますます注文が入らなくなります。また、ゴーストレストランは複数の業態を同時に営業することが可能ですが、それにもかかわらず「専門店」を名乗るのも優良誤認表示になる可能性があるので注意が必要です。

まとめ

ゴーストレストランは、飲食店を比較的ローコストで開業できる画期的なシステムです。しかし、お客さまと飲食店とのコミュニケーションでリピーターを増やす一般的な飲食店とは大きく異なり、ターゲットを明確にしたWEBマーケティングなど、フードデリバリーに特化したスキルが必要です。飲食店経験者でも経験したことがないような集客の仕方や軌道に乗せる方法など、時代とともに変化する新しいマーケティングを学ぶ必要もあります。個人開業は専門家を、FC開業はFC本部をうまく活用して、ゴーストレストランに特化したスキルを身に付け、新しい事業を成功させましょう。

執筆者プロフィール:
成田 良爾(なりた りょうじ)
飲食店専門経営コンサルタント

ヴィガーコーポレーション代表取締役。 厚生労働省レストランサービス技能士(国家資格)、文部科学省後援サービス接遇検定準1級、他多資格有。飲食業界30年以上。 ミシュラン掲載の高級レストランから個人経営の小さな大衆店まで幅広いジャンルの飲食店に携わり、その経験で多くの店を黒字化させてきた実績を持つ。 「100年続く店づくり」がモットー。 職業訓練校講師や女性就職支援事業講師など歴任。現在も多くの飲食店をサポートする。 飲食店専門コンサルティング「オフィスヴィガー」(http://with-vigor.com/)

上記内容は、執筆者の見解であり、住信SBIネット銀行の見解を示しているものではございません。

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