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飲食店がネットショップを開業する際のポイント│必要な資金は?
- 公開日:2023年4月28日

新型コロナウイルスの影響により、私たちの行動習慣も大きく様変わりしました。飲食業においてもテイクアウトやデリバリーなど、新たな営業手段を取り入れるケースも増えてきています。
そんな中、飲食店の新たな営業手段の1つとしてネットショップが注目を集めています。
この記事では、これからネットショップを立ち上げようと考えている飲食店オーナーに向けて、ネットショップを展開するメリット、必要な資金、開設の流れや注意点などをわかりやすく解説します。
飲食店がネットショップをはじめるメリット
飲食店がネットショップをはじめるメリットは、どのようなものがあるのでしょうか。詳しく見ていきましょう。
売上の安定化
ネットショップには以下の特徴があることから、売上が伸ばしやすく、安定化しやすい仕組みになっています。
- 店舗の営業時間外でも注文を受けることができる
- 来店する必要がないため店内の混雑を避けられる
- 365日、24時間販売することができる
- お店の規模や席数に関わらず上限なく販売できる
また、実店舗の場合、悪天候や新型コロナウイルスなどの影響で人々が外出する機会が減ると、売上に大きな打撃を受けることになってしまいます。その点、ネットショッピングは自宅にいながら買い物ができるので、天候などの影響を受けにくい傾向があります。
全国や世界中にファンをつくれる
実店舗では、商圏がお店の周辺や交通機関で来店できる範囲に限定されてしまいます。
しかしネットショップであれば、物理的な距離は関係なく、配送などの条件をクリアすれば、日本だけでなく海外市場もターゲットにできます。
独自性のある商品を適正な価格で販売することができれば、今までよりも幅広いお客さまにアプローチできますし、WEB広告やSNSを通じてプロモーションをすることで全国はもちろん、世界中に自社商品の魅力やサービスを拡散できるようになります。
食品ロスを減らせる
飲食店経営に伴う大きな問題が「食品ロス」です。料理の仕込みの余り、食品の賞味期限切れ、お客さまの食べ残しなどの食品ロス問題は、環境だけでなく店舗経営にも大きな影響を及ぼします。
その点、ネット販売の場合は、注文を受けてからそれに合わせて食材の仕入れや調理をすることができるため、食品ロスや無駄がありません。食材費を節約しながら効率的に利益を上げることができます。
ネットショップ開業に必要な資金は?
ネットショップの立ち上げにかかる費用は、「開業資金」と「運転資金」の2つに分類されます。それぞれの資金の項目や目安の金額について詳しく解説していきます。
開業資金
開業資金の具体的な使い道は以下の通りです。
パソコンや周辺機器
メール対応や注文管理を行うだけなら、数万円程度の安価なノートパソコンで十分対応できます。ただし、自分で画像や動画の編集まで行う場合は、ある程度スペックの高いパソコンが必要です。
発送伝票やラベルの印刷を行う場合はプリンターも必要となります。費用として2〜3万円前後かかります。
商品撮影
料理の写真を美味しそうに撮影するのは難易度が高いため、撮影はプロに依頼するのが理想です。プロのカメラマンに依頼した場合の撮影量は、半日で5〜10万円が相場となります。
自分で商品撮影をする場合は専用のカメラがあればベストですが、最近のスマートフォンのカメラは高性能なので代用も可能です。商品をきれいに撮影するためのLEDライト、レフ板、背景紙などを用意すると、よりクオリティの高い商品画像が撮影できます。安価なものであれば、セットでも1万円以内で購入可能です。
梱包資材
商品を発送する際に使う梱包用の箱や、食品を入れる容器、発送用の緩衝材などが必要となり、1個につき数百円程度かかります。大量にまとめ買いすることで単価は安くなりますが、過剰な在庫が増えてしまわないようにきちんと在庫管理をしましょう。
商品の仕入・開発
飲食店のネットショップ開業では、普段売れているメニューがそのまま商品になります。ネットショップで販売したい商品の原価率をできるだけ30%以下に抑えるようにしましょう。原価率がそれよりも高くなると、利益が出づらくなってしまうため、目安として意識しましょう。
営業許可申請費
取得する許可内容にもよりますが、営業許可の申請費用として2万円前後かかります。
ネットショップ構築費
ネットショップを開業する方法としては、ECモールへの出店と、独自のネットショップ立ち上げという2種類があります。
- ECモールの場合
ECモール出店の場合、かかる費用は「初期費用」「月額利用料」「売上高に応じた販売手数料」です。大手ECモールの場合、なるべく数多く出店してもらうために初期費用は最小限もしくは無料で、売り上げに応じた手数料が発生します。楽天市場 初期登録費用:60,000円 Yahoo!ショッピング 初期費用:無料 Amazon 初期費用:無料 - 自社でネットショップを立ち上げる場合
自社でネットショップを作る場合、ショッピングカートシステムを導入するのが一般的です。導入すれば、ネットショップに必要な商品管理、在庫管理、決済機能がすべてそろえることができます。「カラーミーショップ」や「Shopify」など、さまざまなシステムが存在しますので欲しい機能や価格で選ぶようにしましょう。
自分で制作を行う場合はほとんど費用がかかりませんが、プロに制作業務を代行してもらう場合は10〜100万円前後の費用がかかってきます。
運転資金
運転資金の具体的な使い道は以下の通りです。
システム費
システム費はモール出店と独自ドメイン出店で異なります。
- ECモール出店の場合
ECモール出店の場合、月額利用料と売上高に応じた販売手数料がかかるのが一般的です。楽天市場 月額出店料:19,500円~100,000円
システム利用料:売上の2%~7%Yahoo!ショッピング 月額利用料:無料
販売手数料:無料
※ストアポイント、キャンペーン等の原資負担が別途必要Amazon 月額利用料:無料
販売手数料:10%(食品の場合) - 独自ドメイン出店の場合
各ショッピングカートシステムによって料金形態は異なりますが、一般的には「月額費用」「販売手数料」「決済手数料」がかかってきます。カラーミーショップ(レギュラープラン)の場合 月額費用:4,950円
販売手数料:0円
決済手数料:決済手段により異なる
さらに、独自でネットショップを立ち上げる場合は独自ドメインの取得が必要になってきます。「.com」「.net」などの一般的なドメインの場合、年額1,000~3,000円程度です。
広告費用
ネットショップを立ち上げただけではお客さまは来てくれません。特に自社独自のネットショップの場合は、自ら広告などを使って集客を行う必要があります。
現在主流となっているリスティング広告やディスプレイ広告と呼ばれるWEB広告は、広告がクリックされた回数に応じて広告費を支払う課金方法となっています。
最初は月額1万円程度の少ない予算からスタートして、売り上げが増えてきたら徐々に広告費を増やしていくことをおすすめします。売り上げが伸びてきた場合は、月に数十万円〜数百万円の広告費をかけることも珍しくありません。
人件費
通常の飲食店経営とは別にネットショップ運営を行う必要があるため、受注管理や梱包作業、発送作業、顧客とのやりとりなどの業務が新たに発生します。そのためネットショップ運営をサポートしてくれる人の採用や、一部業務を外注する必要もでてきます。
ネットショップ運営を外注する場合の費用は、月額1万円~10万円が相場です。
ネットショップ開業にあたって営業許可の注意点
飲食店がネットショップを立ち上げる際は下記の2つの手続きが必要になります。
食品の種類に応じた営業許可の取得
ネットショップの営業許可は、飲食店の営業許可とはまったく異なるものです。販売を予定している食品にどんな許可が必要か、事前に調べておくようにしましょう。
食品衛生法の定める営業許可が必要となる業種は全部で34種類あります。
製造・加工業 | 菓子製造業、あん類製造業、乳製品製造業、食肉製品製造業、清涼飲料水製造業、乳酸菌飲料製造業、氷雪製造業、食用油脂製造業、みそ製造業、醤油製造業、酒類製造業、豆腐製造業、そうざい製造業、製菓材料等製造業、粉末食品製造業、魚介類加工業 |
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販売業 | 魚介類販売業、魚介類せり売営業、乳類販売業、食肉販売業、氷雪販売業、食料品等販売業 |
調理業 | 飲食店営業、喫茶店営業 |
処理業 | 食品の冷凍業または冷蔵業、食品の放射線照射業、乳処理業、特別牛乳さく取処理業、集乳業、食肉処理業 |
※都道府県により条件が異なる場合がありますので、必ず最寄りの保健所に確認してください。
販売する商品につける食品表示の確認
調理した食品をネットショップで販売する場合は、食品表示法に基づいた食品表示が必要になります。食品表示法とは、販売されるすべての食品に対して、表示のルールを決めている法律のことです。
食品の包装容器などに義務表示事項を記載するだけではなく、その情報をネットショップ上でも確認できるようにしなければなりません。
食品表示法では、「原材料などの表示(アレルギー表示、食品添加物を含む)」「カロリーや栄養成分の表示」が求められています。
ネットショップを開業する流れ
続いて、ネットショップを開業する具体的な流れを紹介します。
1. 競合他社をリサーチ
ネットショップを立ち上げる際にまず行いたいのが競合のリサーチです。飲食店と異なり、ネット上では他の商品との比較が容易になるため、必ず競合の情報を調べておく必要があります。
その上で「価格」「商品品質」「主な顧客層」「特典」「配送方法」「送料の扱い」といったポイントをおさえて、他社と比べた自社の強み・弱みを把握することが重要です。
2. 商品をつくる
次に考えるのが販売する商品の選定です。実店舗で販売しているものをそのままネット販売用商品にできる場合も、価格や商品の組み合わせ、梱包方法といったネットショップに合わせた工夫が必要です。
1つ数百円の商品だけを売っても、送料や梱包資材を考慮すると利益は残りません。セット商品にするなどして、どの程度の価格帯で販売すれば利益が出るのかも考えましょう。
3. 保健所に許可を申請
食品をネットショップで販売する場合、すでに飲食店営業許可証を取得して飲食店として営業している場合でも、食品の種類に応じた営業許可が求められます。
許可を取得するには、所轄の保健所に申請を出して基準をクリアしなければいけません。まずは所轄の保険所でどのような手続きや許可が必要になるのかを確認しましょう。
4. ネットショップを立ち上げる
飲食店がネットショップを立ち上げる場合、大きく2つの方法があります。
ECモールに出店する
楽天、Amazon、Yahoo!ショッピングに代表されるECモールに出店する方法です。
メリットは、ECモール自体が集客をしてくれることから、早い段階から売れやすい点です。また、運営ノウハウやECモールの知名度を利用できる点が特徴です。
デメリットは、ストアデザインの自由度が少なく、他社と差別化が難しい傾向がある点です。さらに、出店している店舗同士の価格競争に陥りやすいという点も挙げられます。
自社独自のネットショップを立ち上げる
もうひとつが、ネットショップ運用に特化したショッピングカートを使って独自のネットショップを立ち上げる方法です。ショッピングカートとは、注文処理や、決済機能などネットショップを運営するのに必要な機能をもったシステムです。
メリットは、デザインが自由におこなえるためブランディングが行いやすいという点です。また、ECモールで起こりがちな価格競争に巻き込まれにくく、月額費用などが安いために利益率が高いという特徴があります。
デメリットは、知名度が低いためECモールへの出店に比べて集客が難しくなる点です。集客を自社で行う必要があるため、販売促進コストが高くついてしまうことがあります。
5. 商品の販売・配送体制を整える
商品が売れると、梱包・発送作業が必要になります。商品のサイズや重さ、運送会社によって送料が異なるため、どの運送会社のサービスを使うのかを検討しておきましょう。
商品や梱包資材の保管場所を確保するために、飲食店舗以外の倉庫を設けなければならない場合もあります。
ネットショップをはじめる際のポイント
実際にネットショップをはじめる際には、以下のポイントに注意しましょう。
実店舗との両立を考える
実店舗を経営しながら同時にネットショップを運営するのは実に大変なことです。ネットショップは自動的に売ることができる反面、商品発送や入金確認、顧客対応などの手間がかかります。
あらかじめ実店舗とネットショップの業務を洗い出して、人員体制やスケジュールなどを計画するようにしましょう。売上が増えてくればアルバイトなどを雇うことも必要になります。
販売計画を立てる
ネットショップに限ったことではありませんが、新たに事業を立ち上げるときは販売計画を立てなければなりません。少なくとも以下の項目について考えておくようにしましょう。
- 事業目的
- 自社の強み
- 主な顧客層
- 販売数
- 人員体制
- 予算計画
- マーケティング戦略
- 進行スケジュール
事前に計画を立てることで、どの程度の売上が見込めるのか、販売数はどのくらいになるのか、関連する業務がどの程度増えるのかなどの見通しを立てられるようになります。
おいしそうな写真が命
飲食店のネットショップでは、ユーザーに「食べたい!」と思わせられるイメージ写真があるかどうかが、売上を大きく左右します。
ユーザーの画面越しに商品の魅力を伝えるために、シズル感のあるおいしそうな写真を用意しましょう。
イメージ写真だけでなく、商品形状写真、お届けのイメージ写真、調理方法・食べ方の解説写真があると、よりユーザーの興味を惹きやすくなるでしょう。
お客さまの声を集める
ネットなどで商品を購入するときに「口コミ」や「レビュー」などを参考にするユーザーは非常に多いです。実際に買ったユーザーの声は、購入率を高めることにも大いに役立ちます。その理由は、企業ではなく同じ立場の第三者のユーザーから得た情報のほうが、信ぴょう性が増すと感じる人が多いためです。
購入してくださったお客さまには特典をつけるなどして、なるべく多くのお客さまの声を集めるようにしましょう。
リピーターを増やす工夫
リピーターは定期的な購入につながるだけでなく、新規のお客さまよりも購入単価が高く、経営を安定させてくれる存在となります。事実、繁盛しているネットショップの多くは、利益の大半がリピーターから生み出されています。
リピーターは広告などの金銭的なコストをかけなくても定期的に購入してくれるため、一般的には新規顧客を獲得するコストの1/5以下に抑えることができると言われています。
以下のような施策を行うことで、買ってくださったお客さまをリピーターにつなげる工夫をしましょう。
- 次回来店時に使えるクーポンの付与
- ポイント付与システム
- 知人に対する紹介特典
- 購入者やリピーター限定の特典やイベント
- 定期的なメールマガジンの送付
送料の設定
ネットショップでは送料の設定が重要です。送料のパターンには「全国一律」「購入金額に応じて送料無料」「配送エリア別」「配送手段別」「配送手段別」などがあります。商品の利益や競合の状況も参考にしつつ、適切な送料設定を行いましょう。
まとめ
この記事では、ネットショップを展開するメリット、必要な資金、開設の流れなどを解説しました。
新型コロナウイルス収束以降も、ネットショップの利用はますます拡大していくと言われており、それに伴い飲食店のネットショップ開業も増えてくることが予想されます。
ネットショップは出店するだけで利益が生まれることはなく、入念な事前準備や適切な運用体制が必要になってきます。ネットショップの開業を検討しているかたは、この記事で紹介した内容を参考にしてみてください。
執筆者プロフィール:
堀野 正樹(ほりの まさき)
株式会社みらいマーケティング本舗 代表取締役
「経営者の右腕」として企業のECビジネス支援、ブランディングやWebマーケティング代行業務を行う。 「マーケティング設計図」「ブランドストーリー」「発注力強化」から構成される独自メソッドを実践し、上場企業から中小企業まで十数社に対してマーケティングを活用した売上改善支援を行う。
マーケターとして約20年の経験があり、メーカー勤務時代にはマーケティング責任者として7年間で売上を3.5倍の70億円に成長させた実績を持つ。
上記内容は、執筆者の見解であり、住信SBIネット銀行の見解を示しているものではございません。